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経営インサイト

スタートアップの未来を左右するCxO採用で気を付けるべきこと

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下平 将人/Masato Shimodaira
BY Masato Shimodaira

スタートアップの成長と未来を決定づけるのは、何といっても経営チームの構成と各CxO(最高〇〇責任者)の能力です。

CEO(最高経営責任者)はもちろんのこと、CTO(最高技術責任者)、CFO(最高財務責任者)など、それぞれの専門分野がありますが、CxOは全社的な立場で経営者として会社を新たなステージに導く役割と責任があります。

ON&BOARDでは、出資先の経営チームの構築、採用支援について積極的にコミットを行っていますが、支援するなかで感じてきた最適なCxO人材を採用するために重要なポイントを前半・後半にわたって解説します。

目次

  • CxOの役割と責任
  • 採用のファーストステップはビジョン策定
  • 外部から採用すべきか、内部から抜擢すべきか

CxOの役割と責任

CxOは会社の経営幹部として、社長1人ではできない重要な業務を遂行する役職です。

執行責任者であるCOO、ファイナンスの専門家であるCFO、テクノロジートップのCTOなど、さまざまな役割があります。それぞれの役割に適切なCxOを採用することは企業にとって極めて重要です。

実は、CxOと執行役員では全く異なるスキルや思考力が求められています。

執行役員は担当する部門やプロジェクトで、比較的短期間における、業務の成果に責任を持ちます。戦略的な計画を実行に移し、短期的な目標達成に集中する必要があります。この役割では、業務プロセスの管理と運用を最適化することが求められています。

一方で、CxOは中・長期的な成長を実現するためのビジョンを掲げ、それを戦略に落とし込む経営者としての視点や、事業を非連続で成長させるためのビジョン構築力や事業構想力が求められます

例えば、CTOであればエンジニア組織全体のビジョンを定め、企業文化の形成をする役割があります。また、技術やアーキテクチャ選定においても、中長期的な視点が求められます。

【CxOと執行役員の主な違い(フェーズや企業ごとに多少異なります)】

 

CxO

執行役員

成果コミットの時間軸

中期~長期

短期~中期

主な役割

非連続な事業成長、組織開発(数年以上先)

連続的な事業成長、組織開発(1~2年の時間軸)

必要な主なスキルや能力

ビジョン構築力、事業構想力

数値達成、マイルストーン達成に向けた組織マネジメント能力

採用のファーストステップはビジョン策定

CxOの採用を始める前にまずは自社のビジョン、将来像を明確に描く必要があります。

まず、今後の事業戦略や将来のプロダクトの方向性などから組織のあり方を考えながら、このステージに達したときにはこのような組織図にしておこうといった具体的な組織のビジョンを策定しましょう。

その上で、組織のそれぞれの分野を統括するCxOには、どんな人物像、スキル、経験を求めるのかを明確にし、採用に動くことが重要です。

©︎Unsplash/Scott Graham

それでは、どのような順番でCxOの採用を考えたらよいでしょうか。

一般的には、ジェネラリスト要素の強いCOOや技術面全般を統括するCTOを最初に採用した後、徐々にCHRO(最高人事責任者)やCMO(最高マーケティング責任者)などの専門人材を採用していきます。

大型の資金調達、上場準備などを検討する頃にはCFOを採用するなど、企業の成長段階や戦略に応じて最適な分野のCxOを採用しましょう。

外部から採用すべきか、内部から抜擢すべきか

前述のように、CxOと執行役員とでは求められるスキルや能力が大きく異なります。執行役員で実績を出している人が内部昇格してCxOになっても仕事がうまくできるとは限りませんし、CxOで活躍している人が現場を回すことが得意とは限りません。

創業期から主軸として成果を出してきた人と、他社で成果を出してきた外部の人のどちらをCxOとして採用するかは、とても難しい判断が求められます。

外部から急にCxO人材を採用する「パラシュート人事」は、戦略や組織文化や戦略へのミスマッチ、従業員と信頼関係を築くことができないリスクがあります。しかし、CxOとしてのスキル・能力は社内育成が難しい面もあるため、急成長を目指すスタートアップにとって、外部から適切な人材を見つけて採用することも選択肢として考えることがおすすめです。

COOポジションであれば会社にとって優先度が高いため、ふさわしい人物が見つかったら、まずはCOO候補として入社してもらい、活躍を見極めた上で、正式にCOOに就任してもらうのがよいでしょう。前職で活躍していた人であっても、新しい環境や人間関係の中で必ずしもパフォーマンスを出す事ができるとは限りません。

特にCxOでは求められるスキルやカルチャーフィットが特殊なので、準備期間として業務委託で関わってもらうのも1つのアイデアです。候補者にとっても業務委託としてある程度働いてからの方が、CxO就任後に気負わずに働くことができるのではないでしょうか。

後編では、CxOの報酬設計について解説します。

 

下平 将人

Masato Shimodaira

General Partner

長野県出身。弁護士として法律事務所で勤務後、LINE株式会社(現:LINEヤフー株式会社)にて社内弁護士やAI領域の新規事業開発に従事。2017年に株式会社ドリームインキュベータの投資部門に参画。 同社でベンチャーキャピタル「DIMENSION」を立ち上げ、スタートアップへの出資、支援に従事。出資先9社がエグジット。過去出資先:AnyMindGroup、五常アンドカンパニー、サスメド、ハッカズーク、LegalOnTechnologies等。その後、ベンチャーキャピタル「ON&BOARD」を創業。

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