スタートアップの資金調達において、VCとの対話は単なる投資検討の場ではありません。起業家にとっては自らが持つ独自のインサイトと、投資家が多くの事例から蓄積した知見を掛け合わせ、事業をより強固なものへ磨き上げるヒントを得る場にもなるでしょう。
「なぜ、この事業は今、このチームでやるべきなのか」
こうした問いをVC側から投げかける背景には、普段から市場やプロダクトを捉えるために用いている、ある視点があります。その思考の補助線を知ることで、より本質的なコミュニケーションをとることができるはずです。
目次
・「ミクロ」の手触り感と「マクロ」の構造変化
・新たなプロダクトが普及する際の壁
・市場構造から逆算する理想のチーム
「ミクロ」の手触り感と「マクロ」の構造変化
VCが市場のポテンシャルを考える際、最も大切にしているのが「視点の往復」です。市場を一面的に捉えるのではなく、あえて両極端なレンズで事象を観察します。
・ミクロの視点:現場の「手触り感」
個々の消費者の購買行動がどう変化しているのか。新しいプロダクトが現場でどのように使われ、どのような驚きや熱狂を生んでいるのか。データだけでは見えてこない「手触り感のあるニーズ」に注目しています。
・マクロの視点:市場の流れ
規制緩和や制度改正、人口動態といった、抗えない大きな流れを俯瞰します。たとえば、ある法規制の変更によって、これまでの参入障壁が崩れるとき、市場の価値はどこへ移るのか。
ミクロの熱狂がマクロの構造変化と合致したとき、そこには単なる流行ではない、爆発的な成長のチャンスが眠っています。投資家は、この両極の視点を組み合わせることで、事業の持続性を捉えようとしています。

>Unsplash/Dylan Gillis
プロダクトが普及する際の「習慣の壁」を読み解く
新しいプロダクトが世の中に普及するためには、優れた技術であるだけでは不十分です。人間には損失回避の傾向があり、慣れ親しんだ既存の方法から乗り換えることには無意識に心理的抵抗が働きます。そのため、イノベーションを社会実装していく際には、その抵抗を軽々と突破するほどの「圧倒的な付加価値」が求められます。
それは、既存のコスト構造を破壊するほどの「圧倒的な安さ」なのか。あるいは、既存の習慣を劇的に塗り替えるほどの「体験の良さ」なのか。
技術の新しさそのものではなく、「人々の新しい習慣」として定着する根拠があるか、それはいつ起きるのか。これは投資家側が起業家と共に深く議論したいポイントの1つです。
市場構造から逆算する理想のチーム
トレンドや市場構造の解像度が上がると、自ずと「その市場で勝つために必要なチームの資質」が見えてきます。中長期的に勝ち抜くためには、市場構造とビジネスモデル、そして経営チームを一体として捉える必要があります。
例えば、既存の商習慣が強い市場では、プロダクトの質はもちろんのこと、対面での信頼獲得や組織的な攻略が鍵となります。一方、ユーザー側が新たなサービスを受け入れる準備が整っている市場では、体験の質が全てを決めるため、プロダクト開発力やUI/UXの卓越性が重要になります。
投資家側は、その会社が市場で勝っていくために、どのピースが埋まっており、どのピースがまだ足りないのかを考えます。起業家と投資家それぞれが足りない要素に対して共通認識を持てていれば、出資後の支援はより本質的なものとなり、双方にとって価値のある関係を築いていくことができるでしょう。
ON&BOARD TIMES編集部
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