
スタートアップの世界では、競合企業が必ず現れます。同じ領域で、似たようなプロダクト、似たような価格帯、似たような営業戦略を持つ企業が現れたとき、どのように自社を差別化し、生き残る道を切り開くのか。
競合との戦い方は、単に優れたプロダクトを開発すれば済むものではありません。組織設計や採用方針といった複数の要素が絡み合い、経営全体で戦略を描くことが求められます。
競合に後れを取らないために、中長期で勝ち続けるために必要な考え方について整理しておきましょう。
目次
・競合出現を前提に戦略を描く
・組織・カルチャーを含めた差別化
・“オセロの隅”を先に取る
競合出現を前提に戦略を描く
魅力的な市場であればあるほど、参入プレイヤーは次々と現れます。そのため、競合が出てきてから対策を練るのでは遅く、あらかじめ競合の存在を想定に入れて戦略を構築しておくことが不可欠です。
具体的には、顧客セグメント、訴求ポイント、価格レンジ、販売チャネルをマッピングして、初期ポジションを明確にした上で、競合出現後に打つ次の一手(例:機能強化/価格改定/ターゲット変更など)をあらかじめ設計しておく必要があります。
また、競合企業の登場は、「危機」と捉えられがちですが、実は自社の戦略を再定義する重要な好機にもなり得ます。どの市場に注力するのか、どの顧客層に価値を届けるのか、どの価格帯で戦うのか。改めて「自社が勝てる土俵はどこか」を見極めるタイミングです。

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その上で、競合との差別化を図る方法としては、さまざまな戦い方が考えられます。たとえば、プロダクトの機能やUI/UXを磨き上げ、プロダクト自体の完成度で差をつけるのも一つの手です。また、営業体制や導入支援のプロセスをより丁寧かつ柔軟に整備することで、信頼性やサポート力の面で優位性を築くことも可能です。
さらに、料金体系をサブスクリプション型から従量課金型に変更するといったアプローチでも競合との明確な棲み分けができる場合があります。こうした差別化の選択肢を、当初から仮説として持っておけるかで、素早い一手を打つことができます。
組織・カルチャーを含めた差別化
機能や価格が似通ってくる中で、より重要になるのが、プロダクトの価値を支える組織・カルチャーといった土台での差別化です。
たとえば、カスタマーサクセスや営業チームの対応品質は、顧客体験を大きく左右します。徹底したヒアリング文化や、顧客ごとに最適化されたオンボーディング支援の有無は、顧客体験や継続率に直結する重要な要素です。こうした体験設計を組織として仕組み化することは、一朝一夕では模倣できない競争優位の源泉になり得ます。

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誰もが嫌がる重いオペレーション(現場伴走、複雑な導入支援、データ移行、カスタム要件対応)を仕組み化して回せる会社は、競合にとって最難関の壁になります。短期的には負荷が大きいものの、中長期では圧倒的な強みへとつながります。
こうした組織的な差別化を構築するうえで鍵となるのが、採用戦略です。
たとえば、高いスキルと実行力を持つハイスペックな人材を採用の軸に据えるのか、それとも組織の価値観に深く共鳴し、カルチャーを体現できる人材を重視するのか。どのような人材を中心に組織を築くかによって、事業戦略や意思決定のスタイルは大きく変わっていきます。採用メッセージで誰を惹きつけ、誰に来てもらわないかまで言語化し、中長期の差別性に変えましょう。
“オセロの隅”を先に取る
市場ごとに「取り返しがつかないピース(オセロの隅)」は異なります。
それが技術力か、ブランドか、カスタマーサクセスか、営業網か──自社の強みと競合の構造を冷静に見極め、絶対に取られたくない“隅”を先に押さえにいくことが重要です。
競合が現れた瞬間に勝負が決まるわけではありません。勝敗の差は、競合が姿を現す前から、すでに生まれ始めています。
スタートアップに必要なのは、「勝てるチーム」をつくり、「勝てる戦場」を選び、「勝てるやり方」で挑み続けること。
だからこそ、競争優位の設計には、できるだけ早く着手すべきなのです。
ON&BOARD TIMES編集部
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