いまチャレンジするためのメディア「起業の今を知り、今動く」 ON&BOARD TIMES

Contact
事業創造

人類を救ったあの企業はスタートアップ・スタジオから生まれた

事業創造
石塚 賀彦/Yoshihiko Ishizuka
BY Yoshihiko Ishizuka

最近、「スタートアップ・スタジオ」という言葉をよく耳にします。

スタートアップ・スタジオとは、同時多発的に複数の企業を立ち上げる組織のこと。アイデアの創出から検証まで、一貫して行う体制を構築することで、連続的に事業仮説の構築、検証に取り組んでいくのです。

そんなスタートアップ・スタジオからは、人類に多大な影響を与えた画期的なイノベーション創出事例も生まれるなど、成功確率を高めていく上で魅力的な選択肢となり始めています。

*スタートアップ・スタジオには、ベンチャースタジオ、ベンチャービルダー、ベンチャーラボ、スタートアップファクトリー、カンパニークリエーション、ベンチャークリエーション型VCなどさまざまな呼び名があります。

目次

  • 人類を救ったあの企業はスタートアップ・スタジオ発
  • 欧米ではスタートアップ・スタジオは当たり前の存在
  • スタートアップ・スタジオは何が良い?

人類を救ったあの企業はスタートアップ・スタジオ発

実は、新型コロナウイルスのワクチンを開発したバイオ医薬品企業「モデルナ」は、バイオテクノロジーに特化したスタートアップ・スタジオの「Flagship Pioneering(フラグシップ・パイオニアリング)」から誕生しています。

フラグシップ・パイオニアリングは、2000年にヌバー・アフェヤン博士によって、米マサチューセッツ州ケンブリッジで設立されました。

「ヌバー・アフェヤン博士」

Voice of America / Armenian Service

ケンブリッジ近くのボストンは、世界最大のバイオテック集積地となっており、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)、ボストン大学など、バイオ分野で世界をリードする大学や研究機関が集まっています。フラグシップ・パイオニアリングはこれらの大学の研究者などと共同研究などを行いながら、スタートアップを連続的に立ち上げていることが特徴です。

モデルナのワクチンも、フラグシップ・パイオニアリングの研究施設で、複数の研究者や科学者たちが、メッセンジャーRNA(生体内でタンパク質を作るための情報源)の可能性について集中的に仮説の構築と検証を行い、実現に至ったものです。

こうした仮説をより素早く、連続的に実現すべく、フラグシップ・パイオニアリングはExplorations(探索)→ProtoCos(コンセプト検証)→NewCos(会社化・開発)→GrowthCos(成長)の4つのフェーズで、集中的に支援する体制を構築しているのです。

欧米ではスタートアップ・スタジオは当たり前の存在

日本ではまだ馴染みのないスタートアップ・スタジオですが、欧米では1996年の「Idealab」を皮切りに、2000年代後半から数多くのスタートアップ・スタジオが立ち上がり、今では700社以上と当たり前の存在になっています。

スタートアップ・スタジオは何が良い?

スタートアップ・スタジオを活用すれば、創業前からベンチャーキャピタリストにより、「知見やネットワークが提供される」ので、「成長速度が速くなり、シリーズAまでの到達確率も高くなる」ことがわかっています

「スタートアップ・スタジオ内での創業は成長速度が1.7〜2倍速くなる」

 

「スタートアップ・スタジオ発の企業の60%がシリーズAに到達」

世界で最も有名なアクセラレータープログラム「Y Combinator」の創業者ポール・グレアムは、『成功するスタートアップはたった7%(成功の定義は最低40億円以上の企業価値をつけること)。DropboxやAirbnbなどのように大化けする確率は0.3%ほどしかない』と言っています。

これほど難しい世界において、スタートアップ・スタジオ発のスタートアップは、より早く、高い確率でシリーズAまでの資金調達に進むということは、魅力的な選択肢ではないでしょうか。

最近では、多額の資金が必要なバイオテックや気候テックからセールステックまで、幅広い業界で事業の成功確率を上げるべく、この手法を選択する事例も増加しています。

最後にON&BOARDの創業支援プログラム「Out of Bounds」についてのご紹介です。

当社はスタートアップスタジオ機能を持つVCとして、毎年数回、創業支援プログラム「Out of Bounds」を運営しており、EIRを募集しています。

「どのようなテーマで創業すべきか」、「自分が考えている事業テーマが適切か」、「既に起業しているが、ピボットするテーマを探したい」といった悩みを持つ、起業家候補や起業家が事業テーマを検証する場所としてはぴったりです。

プログラムに参加するメリットは3点です。

①有望な事業テーマに出会えて、専門家と事業をブラッシュアップできる
②本業を続けながら、検証を進める起業リスクを最小限にする仕組み
③創業資金調達、創業メンバー探し、グローバル展開への支援がある

既に一度エグジットを経験した連続起業家も当社の創業支援プログラムに参加し、検証を進められています。

詳しくはこちらを参照ください。

石塚 賀彦

Yoshihiko Ishizuka

ON&BOARD Venture Capitalist

現職:大広 未来開発局インキュベーションセンター チーフディレクター
兵庫県出身。2009年博報堂DYグループ「大広」に入社し、11年間プロデューサーとして大手食品会社等、幅広い業界、サポート領域(マーケティング/ブランディング/デジタル含むメディア全般/制作など)に従事。 2020年よりビジネスインキュベーション部門のカタリストとして、VCへのLP出資等、外部とのネットワーク構築および連携PJの推進・大企業のオープンイノベーション支援に従事。 2021年にはDX部門にて、プロジェクトマネージャーとして、プロジェクト全体設計・DX関連サービスの導入・セールスDXの仕組み構築などに従事。 2023年11月よりベンチャーキャピタル「ON&BOARD」へ出向中。
大阪大学薬学部・大阪大学大学院薬学研究科卒業。

石塚 賀彦の記事一覧へ